2013年12月9日月曜日

【みんなのフェスティバル】
ーダンス公演『コンテンポラリーダンス@西日本』ー

INTERVIEW
アーティストにきく『「場所」や「拠点」って?』

ー木村玲奈さん(青森)ー


去る20131123日、無事に『みんなのフェスティバル』の最終日を迎え、公演『コンテンポラリーダンス@西日本』も終了いたしました。
このダンス公演のお題目は「ArtTheater dB神戸という劇場空間での"ソロダンス"の可能性を探る」。西日本の様々な地域で活動中のコンテンポラリーダンスの振付家/ダンサーが一同に会し、それぞれにとっての"ソロダンス"に取り組みました。
このブログでは、参加された8組の振付家/ダンサーに活動する「場所」や「拠点」ということをキーワードにお話を伺ってまいりました。公演が終了した後も、引き続きそれぞれからお聞きした声をここでお伝えしていきます。

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次にインタビューにお答えいただいたのは青森出身の木村玲奈さんです。「みんなのフェスティバル」前半最後のプログラムである「ヒラメキガラス」の上演も終了した公演当日6日前、ArtTheater dB 神戸のロビーでお話を伺いました。





 --- ご出身はどちらですか?

木村 青森県青森市です。

--- 踊りを始められたのはどちらですか?

木村 はい、踊りを始めたのも青森県青森市です。でも最初は新体操をやりたかったんです。ワコールが主催してた新体操のコンペが1年に1回テレビで放映されてて。それが大好きで、録画してもらってずっと見てました。それで多分4歳くらいの時に「どうしても新体操がやりたい」って親に言って。でも、青森で新体操を習うには2時間くらいかかる八戸まで行かなきゃ行けなかったので、近所の公民館でやってるバレエを親が見つけてくれました。そこに通い始めたのが踊りを始めるきっかけになりました。

--- では今はどちらを拠点に活動されていますか?

木村 うーん、拠点って言うのをどう考えるのかなって最近思ったりはしています。でも毎日の生活を送ってる所を拠点と考えたら東京なのかなと思っています。

--- 東京にたどり着くまでどんな所で踊りの活動をしてこられましたか?

木村 青森では4歳から21歳くらいまでバレエとモダンダンスの研究所でずっと踊っていて。小さい時から舞踊公演みたいなので東北6県を巡って踊ったりしていました。でも東京とかはまだぜんぜん行った事が無いって感じで。20歳くらいになった時から青森で色々ワークショップを受けたり振付家の作品にダンサーとして参加し始めました。その次は、イギリスになります。

--- イギリスにはなぜ行かれたのですか?

木村 イギリス人のショーネッド・ヒューズという振付家と出会って。彼女がダンサーをイギリスに連れて行って作品を発表するというのにたまたま選ばれて行きました。最初は青森であった彼女のワークショップに出ていて、彼女の持っているレパートリーを参加者みんなで試したりしていました。そのうち、ここからは2人で何かやりましょうってなって。それから今私たちがやってる「青森プロジェクト」の原型みたいなのが出来て、活動が始まりました。

--- 木村さんはなぜその方のワークショプに参加されたんですか?

木村 なんせ青森は本当にダンスのワークショップの数も少なくって、日本人のワークショップでさえあんまり無い。だから踊りに関する事だったら何でもやりたいって思っていました。特に外国人の人(のワークショップに参加するの)は初めてだったから。これは行ってみようって思いました。彼女がこういう活動してきた人だからというよりも、自分の経験として何でもやってみたいっていう思いがあって参加しました。

--- じゃあ、イギリスの次はどこかに行かれましたか?

木村 次は東京です。それが初めての関東で踊った記憶で。その後、横浜で再びイギリス、イタリア、その次に国内ダンス留学の為に神戸に来て、シンガポール、次に鳥取へ国内ダンス留学での同期の人の作品に助っ人で参加する為に行って。
住んでるところが東京だからそこが拠点なのかも知れないんだけど、拠点が一個だってあんまり思ってないところがあって。踊りの可能性があるなら何処へでも行きたいって思っています。そして、訪ねていくだけで終わるんじゃなくて、行ったその場所が拠点になる。そうやって、拠点が移動するような事を自分では考えています。だから、いまここ、神戸に自分が来たら、神戸が自分の拠点。


--- 土地が変わっていく事で、何か大きな違いを感じる事はありますか?

木村 やっぱり、音。音と空気っていうか、なんか自分の身体の周りを纏わり付くものが違うなと思う。あとは重力。他に身体で感じるものも違っていて、それに気がついたのは「青森プロジェクト」がきっかけです。「青森プロジェクト」って全部床面で踊る踊りなんです。だからやっぱりその土地や土地の建物とか、いろんなものによって凄く左右される。なんかわかんないけれど、土地ごとにここはやりやすいとか、ここはやりづらいとかがあって。フィジカルにはそういう違いを感じる事は強くなったかなって思う。でも、普通に街とか歩いてて感じるのは音かな。自然だとやっぱり自然の音がするし。あと言葉。でも、土地ごとのコミュニティーの関係性とかは、もっともっと長く居ないとわからない事はたくさんあるんだろうなって思います。訪ねてきた人には結構優しいじゃないですか。でもそこに住みだすとそうじゃないっていうことがきっとたくさんあるんだろうなって事を考えたりします。プロジェクトで滞在する期間が長いと、やっぱり見えてくる土地柄とか土地の雰囲気とか人柄とかがあるし。

--- 色んな場所で踊られていることで面白いなと感じる事は何かありますか?

木村 1つの所に留まることも悪いとは思っていなくって、じゃあ何でもありだってなっちゃうんだけど。何を選択するかはこれからどんな活動をしていくかによるんだと思う。移動が多くなったのは、たまたまの出会いによって起こった事で。自分で行こうと決めたのは国内ダンス留学で来た神戸が初めてでした。それ以外はいろんな事が複雑に絡まりあって東京に行く事になったりしています。でも今、改めて移動について考えてみると、なんかそっちの方が自分の制作に合っているとも思うし、見てもらう人に自分から会いに行く事にもなるって感じ。来てもらうのを待つんじゃなくって。現実的に言ったら仕事があったら何処にでも行くっていう気持ちです。でも、もっと歳をとったとして本当にこの土地好きだなって、まぁもちろん青森もそうだけど、そうじゃない土地でも、「あ、ここに定住したい」と思ったらすると思う。定住した場所で定期的に踊ったり、公演したりする事にも興味があります。
でも拠点の意味の違いだけど、心っていうか、何処かはいつも青森にあると思う。だから、私は東京に住んでいるけれど、東京をそこまで拠点って思えない。それは自分にはふるさとがあって、そこが自分と凄く繋がってるから。だから東京に住んでて物理的には拠点だけれど。だとすれば、それが他の土地になっても変わらないっていうか。

--- 目に見えない気持ちの面での拠点は青森にあって、物理的に住んでいる場所としての拠点は身体と一緒に移動しているということですね。青森の土地とはなにか線で結ばれてるような感じなんですかね。

木村 うん。そんな感じがしています。

--- では、今気持ちの面での拠点が青森なんだとお聞きしましたが、木村さんにとってその青森ってどんな場所なのでしょうか?出来れば一言でお願いしたいなと思っています。

木村 なんか、色んな例えがあるかも知れないけど、「お風呂」とか「温泉」みたいなもの。あとは「酸素カプセル」とか「美容院」。無くてはならないもので、なんとかしてまずそこに帰って、リフレッシュして働きに出るとか。髪型変えて、ちょっといい感じじゃないって気分で街に繰り出すとか。あとは一日に一回お風呂入って、フーってして寝るって言うのと同じ。なんで(青森に)帰るのかなって思うと、やっぱ自分の周りにまとわりつく空気がしっくり来るから。生まれた所だから。だからそこに行って、なんとかカプセルに入るみたいにちょっと居て、またじゃぁ自分の仕事に戻ります。みたいな。帰って、また出発する為の場所。常に。

--- では、木村さんにとって今身体と共に移動している方の拠点ってどういうものですか?こちらも一言でお願いできればと思います。


木村 こっちの拠点は「出会いの場所」かな。同じ土地でも誰かに会って、その人と話して、その場所で何かが始まったら、そこが拠点になる。だから場所っていう感覚よりも出会いの場っていう感じです。



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木村玲奈

青森市出身、東京在住。4歳よりバレエ・モダンダンスを始め、ダンサーとして活動。長期参加プロジェクトに Sioned Huws Aomori Project" があり、日本、欧州、シンガポールにて公演。2014年、東北、横浜、欧州にて公演予定。
国内ダンス留学@神戸一期生。新長田に8ヶ月暮らし振付家としての活動を始める。初作品「どこかで生まれて、どこかで暮らす。」が横浜ダンスコレクションEX2014 最終本選に選出される。20142月公演予定。踊ること、つくること、生きること、日々模索中。




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【みんなのフェスティバル】ーパフォーマンスー
『コンテンポラリーダンス@西日本』
日程:1123日 17時 開演 
会場:ArtTheater dB 神戸
参加アーティスト:菊池航(大阪)、木村玲奈(青森/新長田)、くはのゆきこ(福岡)、高木貴久恵(京都)、中間アヤカ(大分/新長田)、三浦宏之(岡山)、目黒大路(鳥取)、yummydance(松山)