2013年11月28日木曜日

【みんなのフェスティバル】
ーダンス公演『コンテンポラリーダンス@西日本』ー

INTERVIEW  
アーティストにきく『「場所」や「拠点」って?』

ーくはのゆきこさん(福岡)ー



去る20131123日、無事に『みんなのフェスティバル』の最終日を迎え、ダンス公演『コンテンポラリーダンス@西日本』も終了いたしました。
このダンス公演のお題目は「ArtTheater dB神戸という劇場空間での"ソロダンス"の可能性を探る」。西日本の様々な地域で活動中のコンテンポラリーダンスの振付家/ダンサーが一同に会し、それぞれにとっての"ソロダンス"に取り組みました。
このブログでは、参加された8組の振付家/ダンサーに活動する「場所」や「拠点」ということをキーワードにお話を伺ってまいりました。公演が終了した後も、引き続きそれぞれからお聞きした声をここでお伝えしていきます。
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公演を1週間後に控えた11月17日、福岡から参加の くはのゆきこ さん が関西へ来られるという事でインタビューをお願いしました。現在、彼女は仕事の為、福岡と関西を往復する生活送られているのだそうです。大阪のど真ん中、賑わう梅田のカフェでお話を伺いました。





---くはのさんのご出身はどちらですか?

くはの  私は北九州市の八幡西区出身です。三菱化成とかですね、八幡製鉄所とかがある鉄鋼の街です。

—−— 踊りを始めた場所は何処でしょうか

くはの  福岡ですね。

--- では、踊りを始めたきっかけは?

くはの  プロフィールにもよく書いてるんですが、一番仲が良かった女友達から同じ職場にいるのにシカトされて、メールの返事も帰って来んくなった事があったんです。男と分かれるよりショックで。同性で仲良かった友達に切られるってさ。それで自暴自棄になって。その時にたまたま、福岡市が主催した長期コンテンポラリーダンスのワークショップのチラシを取ったんです。それは一般市民がダンス作品をつくって公演まで持っていくっていうものでした。「こんなモヤモヤした気持ちになるんやったら、やったこと無いダンスとかしまくってから、そっちに集中するのも良いかもしれん、人生一回きりなんやけん」って思って。それで、ワークショップに申し込んだのが始まりです。

--- 今は、何処を中心に踊りの活動をしていらっしゃいますか?

くはの  今は関西かな。日常においても関西は中心になってきてます。ここの土地ってなんかほっとするんよね。踊り始めてから公演観に来たりとか、友達に会いにきたりとか、関西に来る機会が増えてきてたんだけど、
10年近く経ってくると、福岡で(ずっと活動してても)いっか、もう外に出んでいっかっていつの間にか思い出してました。その時は気持ちも停滞しとった。しばらく関西にもあんまり行ってなかった。でも、去年「国内ダンス留学@神戸」に参加する事がきっかけでもう一回(関西に)飛び出してみたら、やっぱり関西が合ってる事がわかった。

---なぜ関西は自分に合ってるって思うのですか?

くはの   私のダンスは笑いを真剣にやるっていうのがベースやけど、関西は笑いの土地、笑いに厳しい。それが私にとっては良かった。それに笑いを受け入れてくれる間口も広い。まずは受け入れて、自分の中で咀嚼してからコメントをくれるっていう土地柄も好きっていうのもあって。あとね、みんな意識が高い。20代の子とかと喋っとっても、同じ表現者として対等にモノを言ってくれて、みんな自分がやってる事に対して責任持ってるって事がひしひしと伝わるわけ。そういう場があるんだったら、福岡から少々時間かかっても飛び出していきたい。そこでただ話すだけでも私は良いんよね。そういう何にも代え難いもんを、(昨年の国内ダンス留学で)長田に住んで知りました。だけん、留学が終わって家庭の事情で福岡に戻った時、福岡を拠点にするっていうことも考えたけど、それにどうしても納得できなくて半端ないくらい悶々としてました。でも結局は自分がやりたい所だったり、やりたいものがもらえる土地に自分が動くことが、一番表現する上で必要な事が見つかる方法なんじゃないかなってある日ポンと答えがでてきて。踊る場所を限定はしていない。何処の土地でも私を受け入れてくれる土地、水が合っとう土地がやっぱり、私の第2の故郷になっていくんやろうなと思う。

--- その関西で、そこだからこそ面白いなと思う事はありますか?

くはの  いろんな土地があるけど、そこに人が集ってきて交流が生まれるからこそ文化が生まれる。それに、交流によってそこにしかない独特の地域性とかも出来ると思うし、一人一人が持つ人間の質とか歴史とかが、だんだんとその土地に根付いくことでも出来てくものだと思う。それを俯瞰して見ると、その土地のオリジナリティとかになっていくと思う。人間だけがただ住んでさ、何の交わりも無かったら、ただの無機質な建物があるだけで特質性って出てこんと思うけん。やっぱり、東京とかいろいろあるけどさ、大阪とか関西はそういう人同士の結びつきが強いような気がする。

---それぞれの土地ごとの結び付きの違いを、くはのさんはどんなところに感じていらっしゃいますか?

くはの   あの、余計なおせっかいのレベル(笑)。そういう人が居るんが関西の良いところと思いよる。あと、打たれ強いっていうか。(関西の)じいちゃんばあちゃんとか、苦労して苦労して、その苦労を幸せに変えていきよるんやなっていう事が見える人が多いなってよく思ったりしてる。


--- くはのさんが行ってみたい、興味のある土地はありますか?

くはの  まさに東北です。やっぱり玲奈ちゃん(国内ダンス留学1期生・青森県出身:木村玲奈)と知り合った事は私にとってはものすごく大きかった。土地が違う人間って言う事に対してあんまり執着してなかったけど、あの人は東北人としての自分を見せてくれた。そしたら、あまりにも関西とも違う東京とも違う。それに驚いたんよね。そういうちょっと内にこもるというかさ、土地柄の違い、生まれ育った土地がその人のものの見方とか思考に影響していることを感じた。「笑い」とかを真剣にやるっていう事を今までやってきてて、それを「内に秘めたる思いをあまり外にださない」東北に持って行くとどう受け取られるんやろうって興味がでてきた。だけん、今一番興味があるのは東北。それに、海外とかって言う人も居るけど、まだ日本で行ったことの無いところが数限りなくあると思ったら、日本何カ所か回ってみたい。沖縄でも踊った事無いし。沖縄と東北というか、そういう両極端の気候の(場所に)行ってみたい。それに、人の感情の流れに興味がある。私の踊りを見た事で、その人が何を、どういう心の動きをしたかっていうのに、とても興味があるかも。(作品について自分が)思っても無い事を言われる事もあると思う。以前、笑いで作っとうはずなのに、後ろ振り返った時の背中見て涙出そうになったとか言われた事あって。ひょっとしたら土地によって色んなそういう予期しない感想がもらえるかもしれんなって思ったりもするので。

--- そうですか。では、少し「土地」ということから離れて、くはのさんが今一番気になってる事を教えて下さい。

くはの   (笑)結婚かな。いや、冗談。やっぱり老若男女と作品を作って踊る事ですね。あとは、自分のソロ作品に自分の幼少時代の経験とかをもっと掘り起こして、今までバラバラの作品にしてきた事を、ちゃんと1つの流れにしていきたいなと思ってる。最近、それをよく考えるね。幼少時代の記憶とか、自分の幼少時代の様子を母親とかから聞いたりして一冊のノートに掘り起こしたりしていますね。

--- くはのさんが踊りの拠点だと思っている場所はありますか?
  
くはの  関西かな。まだまだみつかるものがありそうな気がするし、ちょっと道にはずれそうになった時、ここ(関西)に戻ってきたら軌道修正出来るような気がする。なんで福岡じゃ無いんやろって思うわけ。昔は福岡が私の(拠点)と思ってたけど。最近冷静に考えたらね、そうでも無い事にようやく気づいたんよ。

--- では最後に、くはのさんが活動する場所は、くはのさんにとってどういうものなのでしょうか?一言でお願いしたいのですが。


くはの   うんとね。「私をつくるもの」かな。場所は(自分を)リセットしてくれる。さっきも言ったけど、間違ったところに進んでも、自分がここだって思う場所に戻ったら必ず間違いとかも教えてくれるもの。指針というか。それが今は関西だけやけど、今回(「コンテンポラリーダンス@西日本」のプログラム)で日本に目を向け始めたので、全国にそういう(「私をつくるもの」としての)拠点が見つけられていけばいいなと思う。将来的には私の拠点は全国にいくつもある予定なんです。そして、その土地とか、そこの人たちとかが私の指針になるんです。もしくはバイブル。そういう風になっていって初めて、「くはのゆきこ」っていうのはなんで今(ダンスを)やりよるんかっていうのも見えてくるんやろなって。様々な土地に洗われて、切磋琢磨されて。だけん、一個じゃ無いな私の拠点は。


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くはのゆきこ

21世紀が華々しい幕開けを飾ったその裏で、人間関係で自暴自棄になり街をさまよっていた時、偶然にコンテンポラリーダンスWS募集チラシを手にする。「ダンス未経験者が踊る無謀さ」と「人生どん底状態の今」をはかりにかけ、こんな時だから何でも出来ると勢いだけで応募。そんなこんなで始まったOL+ダンシング家業の二重生活もはや10年超。モットーは「いつでも素人気質」。「ローリンローリン」ダンス全国普及目標委員会会長。国内ダンス留学@神戸 1期生。





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【みんなのフェスティバル】ーパフォーマンスー
『コンテンポラリーダンス@西日本』
日程:112317時 開演 
会場:ArtTheater dB 神戸
参加アーティスト:菊池航(大阪)、木村玲奈(青森/新長田)、くはのゆきこ(福岡)、高木貴久恵(京都)、中間アヤカ(大分/新長田)、三浦宏之(岡山)、目黒大路(鳥取)、yummydance(松山)





2013年11月21日木曜日

【みんなのフェスティバル】
ーダンス公演『コンテンポラリーダンス@西日本』ー

INTERVIEW Ⅲ
アーティストにきく『「場所」や「拠点」って?』

ー高木喜久恵さん(京都)ー

みんなのフェスティバルの最終日に行われるダンス公演『コンテンポラリーダンス@西日本』。お題目は「ArtTheater dB神戸という劇場空間での"ソロダンス"の可能性を探る」。西日本の様々な地域で活動中のコンテンポラリーダンスの振付家/ダンサーが一同に会し、それぞれにとっての"ソロダンス"に取り組みます。
そこで、参加される8組の振付家/ダンサーに活動する「場所」や「拠点」ということをキーワードにお話を伺いました。

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今回インタビューにお答えいただいたのは京都から参加の高木貴久恵さんです。インタビュー当日は「コンテンポラリーダンス@西日本」の公演に向け京都でリハーサルをされており、その後稽古場から別の場所へ移動しお話を伺いました。



---  ご出身はどちらですか?

高木 京都市です。

---  どちらで踊りを始められましたか?

高木 京都で始めました。生まれも育ちも京都です。

---  踊りはどんな事から始められたんでしょうか?

高木 子供の時にバレエを少しやってたんですけど、本格的に自分が舞台に関わろうと思ったのは大学に入ってからです。京都の大学だったので、京都から出ず、そこからずっとやっています。

---  大学に入って舞台に関わる事を本格的にやろうと思ったきっかけって、どんなことでしょうか?

高木 もともと大学(京都造形芸術大学)で、身体をモチーフに自分の作品を作っていたんですね。それは美術作品で、映像だったりインスタレーションだったり、(ダンスとは)違うメディアを使って表現してたんですけど。何かこう「ダンスも身体だな」っていうのを改めて考えることがあって。造形大には、ちょうど私が入学した時に舞台芸術学科っていうコースが出来たんです。私はそのコースではなかったんですけど、コンテンポラリーダンスっていうものを初めてそこで知ったんです。それまでクラシックバレエとかモダンダンスとかしか見た事がありませんでした。その時にすごく面白いと思って。一番最初の体験としては、山田せつこさんの踊りを大学で見た時に、なんでかわからないけどとにかく涙が止まらなくなって。「身体ってこんなに美しくて、人の心を揺さぶることが可能なものなんだ」って思ったんですよね。それでダンスって言うものに凄く興味が強くなっていったんです。
そんな時期にdotsっていうカンパニーが舞台芸術学科の一期生で結成されました。dotsは舞台コースの人と映像コースの人で結成されたスタッフがメインのカンパニーで、そこに私は出演者として誘われまして。それがきっかけで自分が舞台に立つ事になりました。そこから今まで続いてて、活動してるって感じです。

---  現在も京都を拠点に活動されているんですよね。

高木 拠点はずっと京都です。自分が京都以外の場所で住んだ事が無いので、逆に(拠点として)意識してないですけど。稽古場があるとか、一緒にやっているメンバーの人たちが居るとか、っていうことがそろっていて。環境があるので、そういうふうになっちゃってるというか。今まで「じゃあちょっと京都離れてみょう」ていうふうにも思わなかったんですよね。そのままずるずると。実家も京都で、大好きな街やし。なんかそこまで自分の中で離れる理由が見つけられなくって。なので、京都で創ってるっていうのは自然な事というか。逆にあまり拠点っていう風に感じた事も無いかもしれないです。

--- 高木さんにとって住む場所と活動する拠点って言うのはほぼ同じ意味ですか?

高木 今はそうですね。今も、今までも。でも、このまま一生そうだとはあんまり思わないです。もしかしたら離れるかも知れないし。無理に京都に留まろうとかも思わず、自然の流れに身を任せてるって感じです。

---  活動をする場所として京都以外で興味のある街とかってありますか?

高木 どこでも興味はあります。どこでも行ってみたいし、そこに住む人の踊りも見てみたいです。

---  京都で活動をしていて面白いなと思う事、気になっている事ってありますか?

高木 狭い街なので、知り合いに道でよくすれ違ったりします。みんな自転車で移動するからか、なんか距離感が近い感じ。芸術センターに行ったら誰かに会っておしゃべりできるし。そういう(人と人の距離が)近い感じは好きです。

---  では一度、拠点や京都っていう事を置いておいて、高木さんにとって、ここは自分の場所だなって思うところってありますか?

高木 ないです。生まれ育った所とかっていう事とはちょっと話が変わるかもしれないですけど。それは自分が作品を作る上での、衝動みたいなのにも近いものなんですが。自分が生まれてきて、この世界の中に存在を許されている場所ってあるのかなってことを、ちっちゃい時からずっと探してるというか・・・そういう場所が自分の中で無いんです。もちろん京都には実家があって親がいて、現実的にはそうなんですけど、もうちょっとこう精神的な部分で、自分を俯瞰した状態でみると、自分の居場所ってどこなんやろって。そういう疑問が、作品を立ち上げる時にも根底にあって。だから、自分の場所だって思える所はないんですね。凄い自分の中の話になっちゃうんやけど。なんかこう、この肉体、物質として生まれてきてしまったこの身体をどこに置いていいかがわからなくって。探してますね。

---  生まれてからずっと京都で生活をされ、活動もされていますが、選んでそうされていると思ったりしますか?

高木 はい。京都が大好きだから。でもだからこそ一回離れたいっていう気持ちはあるんですけどね。いつ、どこに、とかはわからないけど、自分がこの先どっかで一回京都を離れたいって気持ちはあります。

---  では最後に、高木さんにとって今活動している場所ってどういうものなんでしょうか?可能なら一言でお願いしたいなと思っているんですが。

高木 うーんむずかしいな。すっごいとんちんかんな答えかも知れないけど、「水」みたいな感じ。毎日飲む水。自分の中に入って、また自分の中から出て行って、吸収して出ていって、吸収して出ていって。なんかその場所にある風景だったり、人だったり、音だったり、すべてのものを、たぶんこう、意識的にしろ無意識的にしろ、自分が吸い取ってて、それが濾過されて自分の感覚とか考え方とかが形成されてるんやろなって。自分ではあんまり意識せず、毎日ただ水を飲むみたいに、ただそこに居るだけなんやけど。そういう感じです。



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高木貴久恵

コンテンポラリー、ジャズダンスを学ぶ傍ら、学生時より'身体'をモチーフにした美術作品を創作。03年よりパフォーミング・アーツ・カンパニー〈dots〉の活動に参加。出演・振付も行う。以後様々な振付家の作品に出演。
近年は自身の作品「あなたの輪郭はいつも美しい」(アトリエ劇研)、「Naked ,a room(Art theater dB)などの他に、Dance Fanfare Kyotoや演劇作品への振付など様々なプロジェクトにも参加している。





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【みんなのフェスティバル】ーパフォーマンスー
『コンテンポラリーダンス@西日本』
日程:112317時 開演 
会場:ArtTheater dB 神戸
参加アーティスト:菊池航(大阪)、木村玲奈(青森/新長田)、くはのゆきこ(福岡)、高木貴久恵(京都)、中間アヤカ(大分/新長田)、三浦宏之(岡山)、目黒大路(鳥取)、yummydance(松山)