2013年11月15日金曜日

【みんなのフェスティバル】
ーダンス公演『コンテンポラリーダンス@西日本』ー


■INTERVIEW Ⅰ
アーティストにきく『「場所」や「拠点」って?』

ー三浦宏之さん(岡山)ー


みんなのフェスティバルの最終日に行われるダンス公演『コンテンポラリーダンス@西日本』。お題目は「ArtTheater dB神戸という劇場空間での"ソロダンス"の可能性を探る」。西日本の様々な地域で活動中のコンテンポラリーダンスの振付家/ダンサーが一同に会し、それぞれにとっての"ソロダンス"に取り組みます。
そこで、参加される8組の振付家/ダンサーに活動する「場所」や「拠点」ということをキーワードにお話を伺いました。
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「コンテンポラリーダンス@西日本」に参加の8組の中で、1番最初にインタビューにお答えいただいたのは岡山から参加される三浦宏之さんです。新長田の劇場へ会場の下見に来られていたところをキャッチし、ArtTheater dB 神戸のロビーにてお話を伺いました。




--- 三浦宏之さんのご出身はどちらですか?

三浦 出身は千葉県です。

--- 踊りを始められたのもそちらですか?

三浦 踊りを始めたのは東京ですね。当時、アスベスト館っていう舞踏のスタジオがありまして、そこに行ったのが踊り始めたきっかけです。その前は、パントマイムや劇団を立ち上げて演劇をちょっとやってました。その劇団では脚本も書いていたのだけど、公演を重ねる毎に台詞がどんどんなくなっていって、最後には台詞がほとんど無い芝居になっていました。そこからダンスのような、身体を動かすだけの表現に向かったんだなという感じです。その後、93年に初めてアスベスト館に行って、舞踏を始めました。きっかけは多分、いろいろあったと思うんですよ。高校時代にバンドをやっていた事なんかも影響してると思う。身体で表現することをなんかやりたいみたいな。


--- アスベスト館では作品に出演されたりしていましたか?                  

三浦 していましたよ。若手公演などで発表するために、自分のソロの作品とかも作りましたね。その時に初めて、踊りをするんだっていう、はっきりしたビジョンが見えたと思いました。それまではやりたい事を見つけようとして、ただ身体を動かす事に興味を持っていたっていうだけで。やっぱり20分くらいの作品を一本ちゃんと作ることで、なんか、「踊りをやっているのかもしれないな。俺は。」みたいな感じにはなりました。何が、僕自身を身体(表現)に引きつけたのか、引き寄せたのかわからないんですけどね。舞踏を始めた当時は、僕はほとんど人と喋らなかったんです。人とのコミュニケーション全く取っていなかったんですね。協調性もほとんど無くて、当時はコミュニケーションに何らかの問題を抱えていたのだと思います。だから、身体を動かすって言うところに否応無く行っちゃったって感じなのかなと今は思っています。


--- 現在、拠点として活動されている所はありますか?
  
三浦 拠点。自分でここを拠点にしているっていう認識はないですけど。周りの人からはやっぱり「岡山を拠点に今活動されています三浦さんです。」みたいな感じに言われるんで、岡山なのかなっていうふうには思いますが。

--- あまりご自分では、そう思っていないのですか?

三浦 「岡山を拠点にしてやってます」っていう自負は無いです。東京に居た時は東京を拠点に活動してたんですよ。自分でそういうふうに思ってやってたんです。でも、東京が拠点であるって言う事自体にちょっと疑問を持つような事もあって岡山に引っ越しました。ダンスとかコンテンポラリーダンスってある程度ネットワーク化されているっていう事もあって、当時いろんなところで起こってたじゃないですか「踊りにいくぜ」とかあったりして。そんな状況の中にあって、あんまりダンスが盛んじゃない所に行って生活したいと思ったのが理由のひとつです。ダンスをやるんだったら東京に居た方が楽っていうか、いろんなムーブメントがあって、いろんな劇場があって、企画があるから、何かをやろうと思えばいくらでも出来るんです。でも、そのやろうと思えばいくらでも出来る状況ってあんまり面白くないなと思って。だからなんか、ほんとに自分は踊りがやりたいのかなって考えた時に、そういうダンスのベースがあんまり無いところに行こうかなと思いました。

--- では、その中でもなぜ岡山を選ばれたのですか?

三浦 岡山はちょっとダンス的には陸の孤島みたいな感じだったんです。岡山にはdamda[ダムダ]っていうダンスの制作を一時期やってたところがあって、そこの人に呼ばれて始めて岡山に行ったんです。そのdamdaがやってた事が面白かったんで行ったんですけど。その方達はその後そういった活動から離れられて、移住後は個人的に何も無いところから始めた感じです。

--- 今、活動されている場所(岡山)で何か気になる事や面白いと感じている事はありますか?

三浦 ダンスをやっていたらどの場所でも、そこで踊る事を面白がるようになると思います。何処だったとしても。でも、岡山には岡山の面白さがあるし、問題も抱えている。そこでじゃぁ何をするのかって言ったら、ただそこで生活するくらいで。特に僕が岡山に行って岡山のダンスの状況をなんとかしようっていう考えはないんです。ただ、僕はそこにいて自分の活動を自分なりにやるだけで、それで岡山のダンスがどう変わってゆくのかなという。だから具体的に助成金とって政治的な動きをとるような仕掛けみたいなことを僕はあんまりやるつもりはないんです。劇場が無いとか、企画者がいないとか、ダンサーやダンスやりたいっていうひとも極端に少ない中でも踊りたい人がいて、僕が創作すると興味を持ってくれる人達がいて、それが少しずつではあるけど増えてきているようには思う。その反面、僕が岡山で面白いなと思ったダンサーは大抵、皆岡山から出て行くわけですよ。僕はそれも面白いなと思ってる。もちろん岡山にずーっと残って、岡山から出るつもり無く踊っている人もいるんですけど。でも、ダンサーは育ってきたら出てっていいんじゃないかなって思うんですよね。中にぎゅっと抱き込まないで。そのように人が回転してゆくことで、更に岡山自体が抱える問題が生まれてくる。そこらへんが気になったり面白いなと思ったりしているところですね。

--- 岡山で活動していて、東京など他の街と違いを感じる事はありますか?

三浦 うーんと。僕自身はあんまり無いですね。でも、印象は違いますよね。お客さんの印象とか。今日も新神戸駅からここ(ArtTheater dB 神戸)まで来る間の人の印象みたいなのはやっぱり違う。街の感じとか、匂いとか、商店街のアーケード入ってきたらお好み焼きだ!みたいな。そういうのって他愛もない事だけど、結構文化を形成する上では大事な事なので、そういう違いは非常に感じていますね。僕は東京で活動していた時、結構アウェーだったんですよ。敵が多いという訳でもないけど、アウェーな感じ。それは僕が勝手に思っているだけなのだと思うけどね。また、岡山でやっていてもアウェーな感じは残ります。多分どこに行っても同じ感じなんだろうと自分では思うんですけど。
岡山も神戸も東京も、海外、アジアとか、アメリカでも、そこの場所に行ったらそこに住んでる人が居て、そこに生活があって、そこの地域のコミュニティーがあったり、コミュニティーの中で踊りをやっている人がいるって言う、そういう状況。そういう状況はどこに行っても変わらないわけです。で、その中に自分が入って生活してるんですけど。なんとなく僕はいつも相対的に引いて見てる感があるんですよね。東京に居た時も客観的に東京のダンスシーンみたいなのを見てました。のらりくらり王道の所に行かずやってたんで、そういう感覚がありますね。でも難しいところもあるけど、アウェーっていうのも。結局は自分自身が何処の者なのか決めかねているだけなのではないか、という懐疑もある。たぶん一生わからないのかもしれないけれど。「僕は岡山を拠点にしています」っていうほど、革新的にそこに根ざすっていうことは無いと思う。結構根なし草です。

--- これからも何処かに留まる事は無いと思いますか?

三浦 そうですね。のらりくらり、です。完全に自分が1つの場所を拠点としてやるって言うのは、なんか、いろんな側面から物事を見たいんだけど、結構それがしぼられてきちゃう感覚があって。だから僕は東京を出た訳なんですが。要するに周りが見えなくなってくるんですよ。同じ場所にずっと居るのはいいけど、その開かれた視点みたいなのは注意していないと閉じていく。もちろん、今岡山で活動している以上、岡山に対しての責任はあるから、そういう事は考えて活動はしているんですけど。ただ他にもあるんですよ、世界はね。海外もあるし、どっかの国では戦争がまだ起こってるし、だから自分が作家として視点が閉じていくのが嫌なんです。ちょっと言い方が変だけれど、あえてアウェーで居る感じが一番(いいと思う。)

もちろんコミュニティーの深い所まで入っていく事で見えてくる事も絶対あるし、そこの塩梅ですよね。僕は岡山に引っ越して3年過ぎたけど、やっぱりそういうところに自然と入っていくんですよ、そういうネットワークの中に。自分がその中心になったりもしていくんだけど、その時にそこだけで風呂敷を広げたくない。もっと外の仕事をするとか、外のものを見るとか、それが必要なのかなと思いますね。


--- では最後に、今活動されている場所は三浦さんにとってどういう場所ですか?可能でしたら一言でお願いします。


三浦 ひとことかぁ。一言で?うーん。形は違うけど生きている人がみんな等しく持っていて、「いつか消えるもの」ですね。あの、場所っていう定義だけ言うと、僕はね、自分の場所ってなんだっていったら、これ(身体)だけなんで。

--- 身体だけ。

三浦 うん。で、それがただ移動してるだけです。だから自分の場所ってどこだろうって探したり、自分の拠点について考えるんだけど、でも、どうあってもここ(身体)が自分の場所なんです。そして、他人の場所(身体)があって、それらの交流があってっていうことかな。そういう身体的な場所を地図の上の場所として置き換える事も出来る。例えば1123日に鳥取や愛媛や岡山から神戸にそれぞれの(場所としての)身体がやって来て、ダンスという言語の中で何かしらの交流をしますね。結果それが(地図の上の)場所の交流を生んでゆくわけです。



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 三浦宏之

M-laboratory主宰・振付家・舞踊家
'93年土方巽記念アスベスト館にて舞踏を始める。以降これまでにダンサー及び振付家として欧州、アジア、北米、南米、21ヶ国40都市以上で公演を行う。'99年ダンスカンパニーM-laboratoryを結成。'02年よりソロワークを開始。’09年東京から岡山へ移住。横浜ダンスコレクションソロ×デュオコンペティションナショナル協議員賞受賞。東京コンペ#2優秀賞受賞。




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【みんなのフェスティバル】ーダンス公演ー
『コンテンポラリーダンス@西日本』
日程:112317時 開演 
会場:ArtTheater dB 神戸
参加アーティスト:菊池航(大阪)、木村玲奈(青森/新長田)、くはのゆきこ(福岡)、高木貴久恵(京都)、中間アヤカ(大分/新長田)、三浦宏之(岡山)、目黒大路(鳥取)、yummydance(松山)